現代は、先行きが不透明で、ビジネスを取り巻く環境の変化が激しく、将来の予測が困難な「VUCA(ブーカ)時代」と言われています。
そんな時代において組織が成功する為には、各人のパフォーマンスを最大限に引き出し、スピーディーな意思決定と高い生産性を求める必要があります。
そこで、従来から重要視されていた「リーダーシップ」に加えて、各業界から今大きく注目されているのが「メンバーシップ」という概念です。
成果を上げる組織やチームに共通する特徴のひとつに、高いメンバーシップ能力を持っていることがあります。
本記事では、リーダーシップとメンバーシップはどんなものか、両者の違いは何か、両スキルを高めることで期待できる効果と養う方法についてを詳しくご紹介しますね。
もくじ
リーダーシップとは? PM理論の重要性
リーダーシップとは、目標達成に向けてチームをまとめて行動を促す能力や機能を指します。
リーダーシップを理解する上でヒントとなるのが、1966年に提唱された「PM理論」です。
PM理論において、リーダーとは「目標達成のP機能」と「集団維持のM機能」の2つの要素で成り立つと提唱されており、詳細は以下の通りです。
- P機能:目標達成機能(Performance) 「目標達成のために計画を立てる」「メンバーに指示を出す」「課題を解決する」などの能力
- M機能:集団維持機能(Maintenance) 「円滑なコミュニケーションを心がける」「メンバーを気遣いこまめに声をかける」などの調整役に近い能力
さらに上記のどちらの能力をより発揮するかにより、それぞれを強弱に分類した4つの(PM型・Pm型・pM型・pm型)リーダーに分類されます。
「PM理論」で自分がどんなリーダーなのかを分析し、それを指標に組織で成果を挙げるためには、組織を動かしていくために求められるリーダーシップスキルを高めることが必要です。
メンバーシップとは? 主体的な行動促進
チーム全体で成果を上げるには、リーダーの力だけでは成し得ることはできません。
組織を構成するメンバー一人ひとりが、与えられた役割を理解し全うすることによって、チーム全体の貢献・組織の業績向上を実現することができます。
メンバーそれぞれが周りに好影響を与えつつ、どのように行動していったらいいか自主的に行動していけるように導く力を、メンバーシップといいます。
メンバーシップの核は、リーダーの指示ありきで自身の役割を果たしていることではありません。
メンバーそれぞれが主体的に行動し、チーム全体のために他のメンバーをサポートしていることです。
メンバーシップは、1992年に提唱された比較的新しい概念ですが、近年多くのビジネスの場で重要性が叫ばれるようになってきています。
リーダーシップとメンバーシップの基本的な違いとは?
組織やグループにおいて重要なリーダーシップとメンバーシップ。
共に組織全体に貢献するという目的は同じですが、それぞれ役割と責任は異なっています。
リーダーシップで求められるのは、チームを率いて目的を達成する姿勢です。
組織の方向性とビジョンを明確にしてメンバーを導いたり、自身が課題に取り組む姿勢を示したりすることで、成果を引き出す役割を果たします。
また、組織の文化を形成し、メンバーシップを鼓舞する大きな影響力を持っています。
一方、メンバーシップで求められるのは、チームの一員として自らの役割を果たし全体に貢献する姿勢です。
メンバーシップは、チームや組織で働く全ての従業員に必要な能力。
メンバーは共通の目標や価値観を共有し、協力して活動することで、チームワークやコラボレーションを通じ、組織全体の成果に貢献します。
また、全体を見ながら、意見をまとめてリーダーに提案する力も必要になります。
リーダーシップやメンバーシップが組織に必要な理由
リーダーだけがどれだけ頑張っても、メンバーのレベルが低いと良いチームにはなりません。
良いチームというのはリーダーシップだけではなく、メンバーシップのレベルが高い傾向にあります。
メンバーシップとリーダーシップは、相互に影響し合う関係です。
たとえばリーダーシップが魅力的であれば、メンバーの参加意欲や貢献度も向上します。
そして、その良好なメンバーシップにより生まれる信頼と連携が組織内の成果を高め、リーダーシップの効果もさらに高められます。
理由は、メンバー同士が信頼し合い、協力して取り組む環境は、リーダーがビジョンを共有しやすくしチーム全体の意欲を引き出すからです。
以上の理由から組織における成功は、リーダーシップだけでなく、メンバーシップを高め、両者を相補的に作用させ出来上がるものと言えます。
また、リーダーシップとは、メンバーシップの一部であり、どのような立場のメンバーであっても根底には「自身の役目を果たし、組織に貢献する」意識が必要です。
そんなチームや組織で働く全ての従業員に必要な能力である、メンバーシップを高めることでどんな成果を得られるのかを3点に絞り、ご紹介していきますね。
当事者意識の向上を図るため
メンバーシップを高めることで得られる成果の1つ目は、当事者意識の向上を図ることです。
メンバーシップを高めることで、当事者意識つまり、自分自身の役割を認識して果たすために何ができるかを考え、結果に対する責任感を持つ自発的な姿勢が培われます。
一人ひとりの仕事に対する主体的な姿勢は、組織そのものの活性化になり、より各人が働きやすい環境の構築にも役立ちます。
組織と各人が双方向で良好な関係性を築くことで、結果的に企業活動が活性化し高い業績を上げ発展していくことが期待されるのです。
チーム力の向上を図るため
メンバーシップを高めることで得られる成果の2つ目は、チーム力の向上です。
ほとんどの仕事は、誰かと協力して進めていくものですよね。
また、会社に限らず組織に所属する際には必ず「チームを組んで何かを成し遂げる」という目的があります。
その為に、業務に向き合う際に一体感を持ち、互いに連携するチーム力が求められます。
チーム力は、それぞれのメンバーが高いメンバーシップを持ち、自発的に行動を起こすことで向上していきます。
それぞれのメンバーシップが低く、孤立して1人で仕事をするのであれば、せっかくチームを形成しても仕事は個人のものとなり、組織に所属する意義は薄いでしょう。
メンバーシップを高めることで、個人では達成できない仕事を実現するためにチームがあることを理解し協働して、1人では不可能なプロジェクトを実現するようになるのです。
業績の向上を図るため
メンバーシップを高めることで得られる3つ目の成果は、業績の向上です。
会社や組織においては、どれだけ優秀な社員を揃えても、互いに協力しながら業務を行えなければ業績が上がりません。
メンバーシップを育むことで、各人が、仕事は個人ではなくチームで行っていることを意識し、あくまでチームの中で自分の役割があることを理解できます。
メンバー間で仕事のミスをフォローし合い、悩みを打ち明けやすい関係を築けると、個人主義では成し得ない業績の向上にも繋がるでしょう。
さらに、メンバー自身で自発的に考えて仕事をすれば、チームとしての総合力を高め、できることの幅を広げることができ、今までになかった柔軟な発想で事業を拡大できる可能性もあります。
柔軟な発想は業績を上げるだけでなく、企業を発展させる上で特に重要な要素です。
リーダーシップに求められる5つの影響力
全ての人があるべき姿勢の根底として大事なメンバーシップについて詳しくお伝えしました。
ではそのメンバーシップの中でも特別、組織の成功の可否に大きく左右するリーダーシップについてをお伝えしていきます。
まず、リーダーシップを強く発揮しメンバーの意欲を引き出すためには、以下の5つの影響力が必要であると言われています。
5つの影響力
- 専門性:メンバーにすごいと思われる技術や知識を持つ
- 返報性:メンバーにありがたいと思われる支援や関与をする
- 魅了性:メンバーに素敵と思われる外見や内面的魅力を有する
- 厳格性:メンバーに怖いと思われる規律や威厳を持っている
- 一貫性:メンバーにぶれないと思われる方針や態度を持っている
リーダーシップを上手に発揮するには、これら5つ全てを一定レベルまで持ち合わせ、バランスを保つことが重要です。
この5つの点から自分を振り返り、どの部分が優れているか、弱みなのかについてを自覚することが必要と言えます。
リーダーシップを発揮する4つのステップ
リーダーシップは、環境や状況によって発揮すべき形が異なります。
リーダーシップを発揮して、目的を実現するための4ステップをご紹介していきます。
- 目的を掲げる
- 実現に向けて一歩を踏み出す
- 影響力によって周囲を巻き込む
- 目的の実現までやりきる
まずはじめに「5W1H」を軸として、実現可能かつ具体的な目標を掲げてください。
リーダーの指示する目標が曖昧なものであれば、メンバーも行動を起こしづらく、結果は曖昧で質が低いものになります。
次に、実現に向けて一歩を踏み出しましょう。
リーダーが自らリスクを取って実際に動き出さなければ、いくら指示が信頼できるものであっても部下は動かないでしょう。
さらに、自らの強みを活かして組織に影響を与えましょう。
その影響力によって周囲を巻き込み協働することで、1人では完遂できない業務で成果を出すことができます。
最後は、掲げたゴールに到達するまで継続してやりきることです。
この作業が最も難しくかつ重要になります。
メンバーシップは役職別に養うものが異なる
目標を達成する組織をつくるためには、それぞれのメンバーシップの向上が不可欠であると、何度もお伝えしてきました。
また、メンバーシップとは組織全体に影響を及ぼす能力であるため、役職や立場などに関係なく、組織に属する全員が身に付けておく必要があります。
しかし、同じメンバーシップの中でも、養うべき能力の方向性はそれぞれ違います。
例えば、管理職はリーダーシップを発揮することを、管理職の補佐をする立場であればフォロワーシップを発揮することをより求められます。
新入社員や若手社員であれば積極性・主体性を、中堅社員であれば貢献力・影響力を求められるのです。
では、後者について具体的に説明していきますね。
積極性・主体性 | 新入社員や若手社員
新入社員や若手社員におけるメンバーシップには、積極性や主体性が求められます。
新入社員は与えられた自身の仕事を正確に確実にこなすことが、チームへの貢献になります。
ですが徐々に、仕事に対して意欲的・積極的に取り組む姿勢も求められるでしょう。
積極性は年齢問わずに仕事をする上で必要なので、若手社員のうちにメンバーシップを身につけたいです。
また、若手社員は自分の意志や判断で行動し結果に責任を持つ必要があるので、主体的に仕事に取り組む姿勢も求められます。
後に管理職に就きたいのであれば初期の頃から、主体性を意識したメンバーシップを身に付けたいものです。
貢献力・影響力 | 中堅社員
一般的には、中堅社員とは入社3年目以降の主任や課長などの役職についていない社員を指します。
後輩の育成や現場と管理職との架け橋となる、中堅社員におけるメンバーシップには、貢献力と影響力が求められます。
貢献力とは、自分以外の周囲の誰かが成果をあげることができるように仕事を行える能力です。
チーム内で自身に与えられた役割を受け入れ、誠実に取り組むことが求められます。
影響力とは、周囲の人を巻き込んでより大きなプロジェクトを達成していく能力です。
他メンバーから模範となる人間性と能力を身につけ、信頼されることが大事になります。
中堅社員は実務の中心的存在として業務を主導するとともに、上記2つの力をもって管理職を補佐するフォロワーシップや後輩を指導するリーダーシップを発揮しなければなりません。
メンバーシップを向上させる方法3選
今までに述べてきたように、組織内のメンバーシップを高めることで、得られるメリットは以下のとおりです。
- チームが自走する
- 業務が円滑化する
- 自身の業務に対する理解・意欲が深まる
- 自身の役割を踏まえた自発的な行動
- 他のメンバーへの協力などを促す
- 組織の一体感が上がる
- 一人ひとりのモチベーションアップ
- 業績の向上が期待できる
では、実際にメンバーシップを効率的に向上させる方法3選についてお話ししていきますね。
第一に、そもそもメンバーシップとは何か、それがなぜ重要かをチームのメンバー一人ひとりに周知することが最重要になります。
加えてチームメンバーが親睦を深める機会を提供しコミュニケーションを育み、その中でメンバーが自身の役割を理解し、明確にさせるよう促しましょう。
また、人間心理を理解しコミュニケーションの強化を図り、メンバー間の相互理解を促す情緒的な取り組みも必要です。
ではこれらの方法に沿って、具体的にどうアクションを起こすべきかを解説していきますね。
メンバーシップを社内やチーム内に周知させる
それぞれのメンバーシップを向上させるために、メンバーシップとは何か、それがなぜ重要かをチームに周知し明確にします。
研修やセミナーを開催し、「メンバーシップとは何なのか」「なぜ会社や社員にとって重要なのか」「各自が主体的に行動すれば、これまで以上に仕事において達成感と報酬を得られる」といった情報を一人ひとりに共有してください。
メンバーシップの概念だけでなく、結果として企業は業績が向上して、意識し取り組むことで社員自身にどんなメリットがあるかを伝えることで、行動を促しやすくなります。
社内イベントを設け個人の役割を明確にする
メンバーシップの向上には、重要性やそれぞれの役割を理解させるなどの事務的な処理だけでなく、メンバー間の相互理解を促す情緒的な取り組みも必要です。
親睦を深める機会を提供して、個人の役割を明確にする機会を設けましょう。
テレワークが主体の会社ならオンライン飲み会やオンラインミーティング、対面での参加が可能であれば、スポーツ大会などのイベントやワークショップのような勉強会の開催がおすすめです。
社内イベントで交流することで、メンバーの互いに対する理解が深まり、信頼関係の構築にもつながるため、自身の役割を明確にできるのです。
人間心理を理解しコミュニケーションの強化を図る
メンバーシップを向上させるためには、メンバー同士のコミュニケーションの強化をする必要があります。
誤解を生まず、お互いに相手の気持ちや考えを理解して、良好な人間関係を築ける円滑なコミュニケーションができるか否かは、人間心理を理解しているかによります。
人間の振る舞いの解釈の仕方の数だけ、人間心理の理解の仕方があります。
つまり、人間心理は人間の数だけ山のようにあると言って間違いないでしょう。
自分1人だけで、星の数ほどある人間心理を理解することは正直難しいと思います。
また、コミュニケーションスキルを高めるうえでも、対人で実践訓練を重ねることも大切です。
ビジネススクールでプロに教わり、対人の実践トレーニングを積むというのもひとつの手と言えます。
個人でビジネススキルを磨くならビジネススクールの【コミュトレ】
(引用:コミュトレ公式HP)
「膨大な数の人間心理や人間の本質を理解して、コミュニケーション能力を効率的に高めたい」
そんな方のためにおすすめしたいビジネススクールサービスが『コミュトレ』です。
コミュトレでは、伝える力を向上できるサービスの中でも、350種類以上の実践的なトレーニングで応用力を鍛えることができます。
コースの中には、メンバーシップに特化したものも用意されています。
このコースを受けることで、人間心理に基づき相手の意図をくみ取り、正確に指示を受けることで仕事の効率化や成果の質の向上させるスキルを身につけることができます。
最短3ヶ月で学ぶことができますので、時間のないビジネスパーソンにもおすすめですよ。
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まとめ
ここまで、ビジネスでの成功における、一人ひとりのメンバーシップを高めることの重要性とそれを高めるための実践方法などを説いてきました。
組織だけでなく、社員それぞれにもメリットをもたらすのがリーダーシップとメンバーシップです。
また中には、管理職でなく一般社員であったり、そもそも会社や組織に属していない人などは自分に必要ないと思うかもしれません。
しかし、全くのひとりで誰からの手助けもなく生きている人はいませんよね?
会社や組織でなくとも、社会生活を営む上で人と必然的に関わることになります。
リーダーシップ含め、メンバーシップとは、家庭や友人との人間関係などの中でも活かせる、すべての人に必要かつ有益なスキルなのです。
リーダーシップやメンバーシップを高め、コミュニケーションを鍛えることで、より有意義で快適な生き方をしてみませんか?
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ぜひ読んでみてくださいね。